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最近の日記
もうずいぶん昔の話だ。その日、ぼくは前の年に始まったテレビ番組「クイズ・ドレミファドン!」のオープニングタイトルをリニューアルする打合せを終えて、フジテレビのあった河田町からタクシーに乗って新宿駅に向かった。新宿三丁目の交差点の信号が赤で止まった時、なぜだか、ふと降りようと思った。伊勢丹ニューヨーク事務所開設準備中の友人から、数日前、楽しそうなエアメールが届いていたことを思い出したが、特別、なにか買い物があるというわけではなかった。悲しいニュースばかりの今とちがって、当時のデパートは、信じられないほど先端カルチャーを発信していた。カルチャーといっても、デパートが札束にモノをいわせ、119億でルノワールを買う!そんな下品な時代はもっと後だ。ぼくが今、回想している、伊勢丹の角でタクシーを降りたのは1977年の夏だ。絶頂期のユーミンが伊勢丹のために書いたCMソング「避暑地の出来事」があとからアルバム収録されるという、出来上がりの曲を無理矢理くっつけて売る昨今とは気合いがちがう。竹内まりやのデビュー曲「戻っておいで・私の時間」にしても、伊勢丹CMのために安井かずみ、加藤和彦夫妻が書き下ろしたものだ。だからあのころは、ディスク・ユニオンや紀伊國屋を覗くように、時代の匂いがどう変わっていくのか立体的に体感できるところが伊勢丹だった。いまふうにたとえると、超リアルなサイバー空間に入って行くときのわくわくするガジェット感覚に近いが、同時にスノビッシュで排他的な緊張も心地よかった。デパートの幸せな時代とぼくらのこども時代はぴったり重なっている。そして、ぼくはその日もバーチャル世界にログインするように、三丁目角の正面から入って、甘い香りのただよう化粧品コーナーに点在する美しい微笑みの視線をくぐり、新館の方に抜けようと中央通路を右に曲がった。曲がる時、視線の左方向7~8メートルくらいのところに、ガラスショーケースを背にして、片方のヒジをついたパナマハットの男性がひとりで立っているのが見えた。「なんだか、デパートの売り場でマネキンみたいに突っ張らかってるな、、、」くらいに思いながら2~3歩歩いて、「ん?」と振り返ると、明るい通りの方をまぶしそうに見ていたその男性も、同時にこっちを振り向き目が合った。「え? ジョン・レノン?」と、見間違えるほどよく似たその男性に向かって、ぼくの足は逆行しはじめた。確認、確認、豚の角煮…ん? てやつだ。して、ぼくは、その男性の前70センチくらいのところまで歩いて行って、「ええと… Mr. Lennon. aren't you? 」 と、あんちゅー模索でたずねてみた。すると、、、(つづく)
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